各地域の力関係
ラグビーはサッカーに比べると、競技人口の多い国はまだ限定されています。
元々イギリス(イングランド)発祥のスポーツで、イギリスを中心に、イギリスの植民地でのみ行われていた経緯から、現在でもその名残が非常に強く残っています。
但し、現地の人ではなく入植したイギリス人の間で行われていたため、近代になるまでラグビーは白人だけで行われてきたスポーツでした。現地人だけで盛んに行われた国はオセアニアにあるフィジー、トンガ、サモアくらいです。
従って以前からアフリカ地域でラグビーが盛んな国として挙げられる南アフリカ、ナミビア、ジンバブエの代表選手はそのほとんどが白人で構成されていました。南アフリカは今でこそ黒人選手が代表にいますが、アパルトヘイトの時代は白人だけのチームでした。その後マンデラ氏らによりアパルトヘイトが撤廃され、国際社会からの批判をかわす意味もあって黒人選手を意図的に増やしてきました。ここ十年はワールドラグビーがラグビーを世界中に普及させる活動を積極的に行い、アフリカ諸国にもコーチを派遣するなどしてその他の国でも強化が進んでいます。近年ではケニアが台頭してきており、7人制では上位に食い込んできています。ケニアもイギリスの植民地でしたが選手は全員現地人です。
アフリカ地域では南アフリカが他のどこよりも強く、その次がナミビア、ケニアとなりますが、ティア1の南アとはかなり実力差があり、アフリカ勢同士でテストマッチを行うことはありません。
南米に目を移すとアルゼンチンが飛びぬけています。特にワールドカップにおいては力を発揮しており、1999年大会で初めてベスト8に進出、2007年大会では開催国フランスを2度下し、3位に輝きました(2015年大会は4位)。その次にくるのがウルグアイですが、力の差は大きく試合になりません。アルゼンチンはティア1に所属するまでに強くなっています。
北米ではアメリカとカナダがティア2の位置にいます。この2ヵ国は昔からライバル同士で、以前はカナダの方がアメリカをやや上回ることが多かったのですが、現在はカナダの力が落ちてきています。
アジア地域(中東を含む)においてはティア2の日本が他を寄せ付けない力を持っています。以前は韓国や香港と競った試合をしていましたが、20世紀末からのラグビーのプロ化にアジア地域で最も早く取り組んでから日本と他の国との力の差は大きく開きました。現在アジアで日本に次ぐのは香港ですが、昔から在留英国人で編成されたチームです。中国に返還されてからは現地の中国人が少数ですが加わりました(日本代表の外国出身者より少ない)。その他の国はレベルが追いついておらず、アジアでのラグビーの普及の遅れが目立ちます。
オセアニア地域においては、やはりイギリスの植民地であったニュージーランドとオーストラリアがずば抜けています。とくにニュージーランドはランキング1位を長くキープしており、現在ではすべての代表チームがニュージーランドに勝つことが最も難しくなっています。オーストラリアとは長年のライバルで古くから定期戦が行われています。1996年からは、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3か国による対抗戦トライネイションズ(TriNations)が始まり、南半球のチャンピオンを決める大会になりました。そして2012年からは力をつけてきたアルゼンチンが加入し、ザ・ラグビーチャンピオンシップとなっています。
オセアニアではそのほかフィジー、トンガ、サモアで昔からラグビーが盛んで、この国の人々は体格と身体能力に優れており、ティア2でありながらティア1の国々とも数多くの試合を行ってきました。めったに勝つことはありませんが、いつも接戦するだけの力を持っています。過去のワールドカップにおいてもこの3ヵ国は好成績を挙げており、サモアはベスト8に入ったことがあります。ここ最近ではフィジーが頭ひとつ抜け出しており、世界ランキングも10位に入り、ティア1に届きそうな位置にきています。
最後にヨーロッパですが、イギリスはサッカーと同じく、イングランド、スコットランド、ウェールズのラグビー協会ごとに代表チームは分かれます。サッカーと異なるのはアイルランド代表はアイルランドが南北に分かれる以前からアイルランドラグビー協会が存在していたため、アイルランド共和国および北アイルランド(イギリス)から選手が選出されます。ヨーロッパではこの4ヵ国とフランスがトップを競い合っています。それに続くのがイタリアで、毎年この6ヵ国で対抗戦(シックスネイションズ)を行い、この大会の優勝国が実質ヨーロッパチャンピオンとなります。また、この6ヵ国はティア1にグルーピングされます(他の地域のティア1の国とテストマッチを行います)。その次のグループがジョージア、ルーマニア、ロシア、ポルトガル、スペインのティア2の国々です。他のヨーロッパ諸国と共に「ラグビー欧州ネイションズカップ」を開催しており、ここ数年はジョージアが優勝しています。ヨーロッパは他の地域に比べてラグビーが普及しており、年々実力が上がってきています。
【アフリカ】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | 南アフリカ | 5 | 6 |
2 | ナミビア | 22 | 5 |
3 | ケニア | 28 | 0 |
4 | ジンバブエ | 40 | 2 |
【南米】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | アルゼンチン | 9 | 8 |
2 | ウルグアイ | 18 | 3 |
3 | ブラジル | 26 | 0 |
4 | チリ | 30 | 0 |
【北米】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | アメリカ合衆国 | 15 | 7 |
2 | カナダ | 23 | 8 |
【アジア】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | 日本 | 11 | 8 |
2 | 香港 | 21 | 0 |
3 | 韓国 | 32 | 0 |
4 | スリランカ | 43 | 0 |
【オセアニア】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | ニュージーランド | 1 | 8 |
2 | オーストラリア | 6 | 8 |
3 | フィジー | 10 | 7 |
4 | トンガ | 12 | 7 |
5 | サモア | 16 | 7 |
【ヨーロッパ】
国名 | 世界ランキング | W杯出場回数 | |
---|---|---|---|
1 | アイルランド | 2 | 8 |
2 | ウェールズ | 3 | 8 |
3 | イングランド | 4 | 8 |
4 | スコットランド | 7 | 8 |
5 | フランス | 8 | 8 |
6 | ジョージア | 13 | 4 |
7 | イタリア | 14 | 8 |
8 | ルーマニア | 17 | 8 |
9 | ロシア | 19 | 1 |
10 | スペイン | 20 | 1 |
11 | ポルトガル | 24 | 1 |
*ランキングは2018年11月9日時点
W杯出場回数は2015年大会までの分