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日本のスポーツの在り方を考える

中学の運動部活動をめぐり、スポーツ庁は16日、活動時間を「長くとも平日2時間、休日は3時間程度」とし、「週2日以上」の休養日を設けるガイドライン案を有識者会議に示した。運動部活動は長すぎるとけがのリスクが上がり、練習の効率も悪くなるうえ、教員の長時間勤務につながるとの理由からだ。ごもっともともとれるものであるが、この問題は解決がなかなか難しいと思う。
特に高い成績をおさめている部活にとっては受け入れ難いものであろう。またTVで行っていた学生への街頭インタビューでも学生たちの意見は分かれていた。
1/21にTBSで放送された『サンデージャポン』では杉村太蔵さんが『学校の部活はなくして地域でスポーツがやれる環境を整えればいい』という発言を聞いてふと思うところがあり、筆をとることにした。
そもそも日本におけるスポーツは、若者の教育の一環として学校で指導されることで普及した。つまり、学校の部活が日本のスポーツの原点である。現在の日本のスポーツ界のトップアスリート達もその多くはスポーツの強い学校(=部活)で育った人たちである。野球しかり、ラグビーしかりである。ラグビーにおいては学生スポーツとしての人気が今でも高い。従って、部活の練習時間が制限されることは、チームがよい成績を残すためには支障になりかねない。スポーツと部活は切っても切り離せない状態になっている。
一方、海外に目を向けると、欧米ではスポーツは地域のクラブが中心となっている。そのスポーツをやりたい人が近くのクラブに入り、自分たちのレベルでそのスポーツをプレイしている。ラグビーのような団体スポーツであれば、年齢、レベルに合わせたチームが編成され、同じクラスのチームと試合を行う。レギュラーになれないため練習しかできず試合に出られないということもほとんどない。実力が上がれば上のクラスに入れる。その頂点に代表チームがある。
この違いはどこから来ているのか?
日本はスポーツを教育(心身の鍛錬の場)ととらえてきたのに対し、欧米では『スポーツは楽しむもの』として発展してきたこととの違いである。つまり、スポーツに対するとらえ方が違う。そうした文化的背景が冒頭の問題につながっているのだと思う。
日本の高校野球を見ていると、甲子園に出ることはプロ野球への登竜門である。なのでプロを目指す学生は野球の強豪校へ進学する。高校がプロ野球選手育成機関のようになっている。これは健全といえるのだろうか?
今のようにスポーツがお金と絡んでいなかった時代であれば、部活は純粋に『心身の鍛錬』の場として機能したであろう。しかし、現代においてはそれだけでは収まらなくなってしまった。競争はますます激化し、その先にある果実を手にしようと小さい子供のころからそのスポーツで上を目指すことのみに注力して、勉学は関係なくそのスポーツで学校を選び、レギュラー争いに負ければ挫折し、そこから違う道を選び直さなければならなくなる。
そもそもスポーツとはその生い立ちからして楽しむものなのに、すでに子供の頃から“職業としてのスポーツ”をやらされているようにも見える。現代のスポーツ分野の日本の競争力はこのシステムに支えられている。一方、異なるシステム(地域のクラブがベース)でも欧米のスポーツの競争力は高い。何よりも彼らにとってスポーツは身近であり、やりたいときに自分に合ったレベルでできることが私には羨ましく思える。
日本と欧米ではスポーツの普及した背景が異なるため、良し悪しはつけられないと思うが、今回のスポーツ庁が出したガイドラインはこれからの日本のスポーツの在り方に一石を投じるものになっていくかもしれない。ちなみにガイドラインに法的な拘束力はないため、世論がどう考えていくかに掛かっている。