ラグビー初心者サイト | ラグビールール・ラグビーの楽しみ方など

カウントダウンタイマー

日本代表、サンウルブズの喫緊の課題

現在の日本代表、サンウルブズの喫緊の課題を挙げるとすれば、ラインアウトの安定とアンストラクチャーへの対応であろう。
ラインアウトはフォワード選手の身長の低さが一番の問題。過去のワールドカップ出場国の中で日本代表の身長は常に最下位争いだった。これについては日本チームの長年の課題であり、外国人選手が多く加わるようになった現在においてもまだ解消できていない。強豪国のフォワードの選手はロックでは2mが当たり前であり、バックローにも高身長の選手を多く揃えているが、日本代表、サンウルブズは高身長の選手層がとても薄い。ちなみに2015年のワールドカップで3勝を挙げた日本代表フォワードには195cm以上の選手が必ず2人入っていたが、今日のサンウルブズにはひとりもいなかった。
身体的な不利は如何ともしがたいところなので、サインプレーやキャッチングのタイミングの工夫で対応するほかはない。来年のワールドカップに向けて最も対策に力を入れるところだろう。もっと長い目でみるのであれば、ラグビーの人気を高めて、従来バレーボールやバスケットに流れていた高身長の学生がラグビーをやるようになってくれれば、海外との差を今より詰められるだろう。
それに比べたらもっと早く解決できる課題がアンストラクチャーへの対応である。今日(2018.3.24)、秩父宮でサンウルブス対チーフスの試合があったが、この対応力不足が響き、10-61で大敗を喫した。アンストラクチャーとは、プレーヤーの陣形が整っていない状態で、例えばハイパントキックをしたあと、落下点でボールの奪い合いが起きた時、どちら側のプレーヤーがボールを取るかによって、各プレーヤーは攻撃の陣形をとるかディフェンスの陣形をとるかを判断しなければならないが、ボールキャッチの時点ではまだお互い陣形を立て直せる状態ではない(混沌とした状態)。この状態のとき、各プレーヤーがそこでどのような動きをとればよいかを瞬時に判断し、すばやく適切な行動に移した方が大きなチャンスを得られるというもので、この日のチーフスはそれがサンウルブズを上回っていたため、アンストラクチャーからの攻撃でサンウルブズのディフェンスを破る機会を多く作ったのである(それにしてもSOマッケンジーの個人技は素晴らしかった)。
ニュージーランドやフィジー、サモアなどはこのアンストラクチャーからの攻撃が得意である。小さい子どもの頃からラグビーに親しみ、感覚を養ってきたことが大きいように思える。一方、日本の選手は、監督やコーチから“型”でプレーを教えられ、その型にはまるように練習する“文化”で育ってきている。つまり、ストラクチャーには慣れているがアンストラクチャーには慣れていない。この差を埋めるのは言うほど簡単ではないだろうが、やりようはある。例えば、ゲーム中でアンストラクチャーな状態を極力作らないようにするのもその一つだ。今日のチーフス戦でサンウルブズはハイパントや後方へのキックが多かった。それはゲームプランであったのかもしれないが、自らアンストラクチャーの状態を作りだし、相手ボールとなって得点されてしまった。セットプレーやブレイクダウンで相手を圧倒できていればそのようなキックは蹴らずに済んだのだろうが、それができなかったため蹴るオプションを使ったのだと思われる。2015年のワールドカップでアンストラクチャーに長けたサモアとの試合では、スクラムで相手を圧倒し、ブレイクダウンで相手の反則を誘うことができたため、サモアの強みを出させないことに成功し、26-5で完勝した。
そう考えると、日本代表およびサンウルブズは、アンストラクチャーの場面を作らずに戦えるだけのセットプレーの強化(スクラムでは相手を押し切るレベル、マイボールラインアウトの獲得率100%)とブレイクダウンの攻防力の強化に的を絞っていくべきと考える。もう迷っている時間はないのである。