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日本ラグビーの可能性

21世紀に入る前のインターナショナルマッチのビデオを見ると、昨今のラグビーとはスタイルが明らかに違う。まさに“抜く”ラグビーをしている。
パス、ステップ、ハンドオフ、キックなどを織り交ぜて、相手ディフェンスのいないところを“突く”のである。フォワードはボールの確保に徹し、バックスは技とスピードで相手ディフェンスを抜いていくのである。日本代表が日本人のみで編成されていたころは、フォワードは相手と“格闘する”ことを極力避け、とにかく早い球出しをしてバックスで勝負をかける。日本代表のバックス陣は小さいながらもスピードに長けた選手が多くおり、すばやく展開して大外のウィングがライン際を駆け抜けてゴールに駆け込むのである。スクラムで相手を押すことなどまずなく、SHが入れたボールをフッカーが素早くダイレクトフッキングし、No.8の足元まで一気に転がったボールをSHは身を挺したダイビング・パスでSOへ回すのである。SHがスクラムにボールを入れてからSOに渡るまでの時間は2、3秒ではなかろうか。
そして時は流れ、ラグビー選手の体格は世界的に大きくなった。バックスの選手ですらフォワードの選手とあまり変わらないサイズになってしまった。ディフェンスの技術も向上し、以前のように個人技で相手を抜くことは容易にできなくなってしまった。タックル後の密集に人数を極力かけず、ディフェンスの方に回るため、攻撃側の前には常に人の壁ができている。
そのため、攻撃側はボールをもったらまずこの相手ディフェンスラインに体をぶつけて一旦ポイントを作り、ボールをキープして味方の次の攻撃の起点とする。ラック(密集でボールが地面にある)のオフサイドラインは非常に浅いため、攻撃側のラインが余程深くないと、あえなく相手ディフェンスの餌食となるため、キックで前進を図るか、再度フォワードで相手ディフェンスに突っ込み、少しでも前に進もうとする。これを勢いをつけて連続して繰り返すうちに相手ディフェンスが後方に下がってきたら(相手ディフェンスとの間に距離がとれるようになったら)、バックスラインに回すが、やはり抜くのは容易ではない。バックスもフォワードと変わらず、チャンスが訪れるまでは“抜く”ではなく“当たる”で前進を図る。このパターンが昨今の世界のラグビーの主流であり、大きくて強い選手同士のフィジカル・バトルが主流スタイルとなっている。
日本代表においてもこの流れに逆らうことはできず、できるだけ大きくて強い選手を揃え、対抗している。外国出身の選手を代表に加えるのは今や不可欠であり、違和感はなくなりつつある。しかしそれでも世界の強豪国と比べればまだ小さいチームに分類される。
ただ、日本チームはフィジカル・バトル競争では勝ち目はないため、それ以外の部分で相手より優位に立つ必要がある。それは昔からの伝統の“早いラグビー”である。ボールを目まぐるしく動かして、相手を翻弄するラグビーである。近年は外国のチームも、特に南半球のチームは“早いラグビー”をするようになっているため、それを上回らなければならない。この“早いラグビー”を実践するためには、マイボールのキープ力、素早い球出し、ミスをしない素早いパス回し、80分間休まず走り回れるフィットネスなどが求められる。その上、マイボールをキープするためのセットプレーの安定、ブレイクダウンで負けないフィジカルも必要となる。更に自分たちよりも強くて大きな相手の攻撃を食い止めるタックルスキルおよびそのベースとなる筋力の強化も欠かせない。
このように、世界のラグビーの潮流はパワーラグビーであるが、日本はそれに“スピードラグビー”を加味して世界に対抗している。日本のチームはフィジカルで世界との差をつめていき、“スピードラグビー”を機能させれば、間違えなく世界と互角以上の試合をすることができると言える。絶え間ない努力に裏打ちされるものとなるが、“勝てない”と諦める必要は決してないだろう。